経営には人のいのちを使う、重大な責務がある。
生きることは時間軸との歩みであることを私が再認識したのは、冒頭の発言である。発言主はサイバーステップ株式会社代表取締役社長の佐藤類氏。サイバーステップは、ネットワークとエンターテイメントを両輪に様々なアプリケーションを開発、展開している企業だ。創業からわずか6年でのスピード上場を果たし、グローバル展開を加速させている。
佐藤氏に創業のきっかけを伺うと、至極自然な流れであったことを明かしてくれた。佐藤氏の実家は父親がカイロプラクティック師、母親がピアノ教師といった云わば創業のお手本が目の前に存在していた。「電話の応対方法や予約の受付など、ビジネスの基本が自然と身につける環境下(佐藤氏)」にあった。そうした家庭環境の影響であろうか就職したいと全く考えなかったと話す。
そんな家庭環境にある人は周囲を見渡せばたくさんいるだろうが、自ら行動しない限り、商売の感性は研ぎ澄まされない。おもしろいエピソードがある。中学生の時、ファミコンがブームになる。佐藤少年はゲームの中の「隠しコマンド」を情報として友人に与えたという。無論、ビジネスとして。佐藤少年がビジネス化したアイデアは幾つもある。どうやら佐藤氏には天性の商売人としての才覚が幼少期からあったようだ。
そうした環境の下、国立東京工業高等専門学校を卒業した佐藤氏は創業資金をつくるため大手引越し会社のスタッフとして働き始める。そこで貯めた軍資金を元手に名古屋でSEとして、更に創業資金を作った。満を持して創業したのは、それから約1年半後。今までの道程を振り返ってもらうと「わらしべ長者のような感じ(佐藤氏)」という意外な言葉が返ってきた。佐藤氏の経営観のひとつに、リソースや資金は出来るだけ使うことにあるそうだ。実際、資金のフロー図を書きながら佐藤氏が説明してくれたが、書き上げたものは「山あり谷あり」のものだった。しかし、ノートに描かれた山は時間軸とともに大きくなっている。ここに経営者の素顔が見えてくる。
3人の仲間で創業した同社だが、それぞれ役割分担の差異はあれど方向性―ベクトルは同じであった。同社の理念にもあるように、「今ないもの、新しいものを創造し世の中を楽しくする」ことに向いている。価値を最大化することこそ、同社の使命なのかも知れない。ただ、そこに行き着くには経営者として多くの仲間との時間の共有が必要である。冒頭の発言に魂が込められていると感じるのは、佐藤氏が「仲間の存在」の大事さを誰よりもわかっているからに違いない。


