葛藤があるとビジネスは楽しくない
漫画古書販売を手掛ける、株式会社まんだらけ。中野ブロードウェイにその本社は位置する。まず驚いたのが買い物客の多さ、それに加えて印象に残ったのが買い物客の笑顔である。子供が漫画やおもちゃを前にしてニコニコ笑みを湛える姿は想像に難しくないのだが、私の目に入る買い物客はいわゆる“おとな”である。その“おとな”を瞬時に笑顔にさせる商材を扱う“まんだらけ”のビジネスはどのようにして生まれたのか?創業者であり代表取締役社長の古川氏にお話を伺った。
創業のきっかけは以外にも自身が没頭していた漫画制作の時間を捻出することから始まる。目を付けたのは、漫画専門の古本屋。これなら好きな漫画に囲まれて仕事が出来る。しかもお客さんの方から店舗に足を運んでくれる。空いた時間には、好きな漫画を描ける。まさに願ったり叶ったりの環境が手に入ったと当時を古川氏は振り返る。「ものすごく幸せでした」という言葉に偽りはない。しかしそれだけではない。古川氏は古本をビジネスに変革させるあるアイデアを手にした。それは値札を付けると言う当時の業界では考えられなかった値段の可視化であった。相当の業界内の反発があったであろうが、ここに現在に於ける、まんだらけ独自のプライシング力が開花する。「お客さんが値段を決めるんです。」と静かに謙虚に語る古川氏からは自信を垣間見ることが出来る。新品の消費商品でもプライシングは難しい、況してや漫画古書である。ずば抜けたマーケティング力とそれを支える消費者を味方に付けなければ値付けは単にギャンブルに終わるであろう。
古書を創造する原点の新書に挑むクリエイター・漫画家を古川氏はどう見ているのか。「日本のクリエイター・漫画家は世界水準から比べて非常に高い位置にいる。だからその意識を持って欲しい。」と語る。その背景には経済の発展、若い産業の参入が大きいと分析する。昔と違い若いクリエイターにも創作の場が与えられ、尚且つ作品の発表の場も多い。芸術とは精神的自由と経済的豊かさが織り成すものと氏は続けた。一方、漫画市場に対しては自由な縛りも必要との見解を示す。顧客に支持されない作品は市場により淘汰されるであろう。だから、クリエイターの感性を止める規制はあってはならない。これはまさに人間本来の持つ浄化作用を信頼している証だと思う。
氏は「好きなことが仕事をする。」と語る。肉体的に辛いなと感じることはあっても仕事上のストレスは全くないと言う。好きなことを仕事にする。それ以上に仕事に迷いや葛藤があるとビジネスは楽しくない。葛藤を捨てた時、ビジネスは楽しいものになる。それが成功への近道なのかも知れない。古川氏の経営観からそれを教わった気がする。


